歴史的経緯から見えること

今後少子高齢化は進行していく一方で、それを見据えた制度がこれまでいくつも導入されてきましたが、注目すべきはその大部分が医療提供体制の改革に向けられているという事です。そしてその改革で避けて通れないのが、医師の必要数・分布状況・その役割を果たしていけるのかというという問題です。

これは医療界だけでなく社会的にも大きな関心を持たれている事であるのに、その全体像を開設しているテキストというのは少ないように感じます。とりわけ、問題の歴史的経緯を掘り下げ且つ客観的データを用いてというのは更に少ないと言えます。

この歴史的経緯・客観的データから、私は3つの特徴があると感じました。1つ目、医師数を安易に増やすという行為は良くない。同時に別途地理的偏在への対策・診療科偏在への対策も組み込まなければ、肝心の医師を必要としている地域へいつまで経っても医師が供給されません。マクロ的方策とミクロ的方策、双方を織り交ぜた工夫が必要と言えるでしょう。2つ目、医師という人気があって参入する圧力の高い職種においては数の増加を図るというのは容易で実現しやすいと言えます。しかしその一方で、医師過剰が表面化し養成数を削減しようとした時にブレーキが利きにくいというデメリットがあると言えます。そして最後に3つ目。医師増員を実施しても、実現に現場に医師が供給されているのにほぼ10年は必要となります。効果発揮までのタイムラグが生じるのです。減らす時も同様で、数のコントロールは難易度が高いと念頭に置いておくべきでしょう。

これら3点を注意していなければ、また同じことを繰り返す羽目になるのではないでしょうか。